バージョン3.21以降に実装したメルコ・マーカーレスDSD方式について、そもそもマーカーって何?今までと何が違うの?というようなお問い合わせをいただくことがありますので、動作イメージについて説明してみました。
■従来のDSD送出方式:DSD over PCM方式
DSDデータをN1からUSB-DACに送るためには、USBを経由する必要がありますが、通常のUSBオーディオクラスではPCM以外は考慮されていないため、そのままでは送れません。このため、DSDデータをPCMデータと同じように送れるよう、細かく切って一つ一つ「マーカー」と呼ばれるデータをつけます。受け取ったUSB-DAC側でも同じように一つ一つからマーカーを外してDSDデータを取り出します。
鉄道ファンの方にしかわからない例で恐縮ですが、碓氷峠を越えるために横川駅で機関車をつけて、軽井沢駅で切り離すようなイメージです。
■マーカーレス方式
本来そのままでは送れないDSDデータを、USB-DACに特殊な方法で直接送ってしまう方式です。特殊な方法ですので、一部のUSB-DACにしか適用できないのが欠点です。
経路を変え、機関車不要で軽井沢まで直接行けるようになった長野新幹線のようなイメージです。
DSD over PCM 方式(上)と、マーカーレス方式(下)のイメージ
DoP方式は山を越えるときに3両×2編成で、マーカーレス方式は「特別な線路を」4両×1編成で移動します。
結果としてどちらも4両移動することには変わりありません。
■DSD over PCM 方式と、マーカーレス方式の共通点
- 流れていくDSDデータは全く同じです。どちらの方式も「ネイティブDSD」と言えます。
- 同じように、ドライバ不要でつなぐだけでご使用になれます。
■DSD over PCM 方式のメリット
- PCM方式をベースにしており、比較的幅広い仕様実績があるため、高い互換性があります。ほとんどの DSD 対応 USB-DAC は DoP 方式に対応しています。
- 技術的に安定しています。
■マーカーレス方式のメリット
- 従来全情報の1/3を要していたマーカー分の付与・送出が不要になるため、送出効率が高まり、結果として N1 側、DAC 側ともにデータ処理が「軽く」なります。
- DAC側の仕様により、DoP 方式では再生不可能なデータが再生できる場合があります。
DSD256、DSD512のようにデータが大きくなると、マーカーを含めることでデータが膨大になってしまうため、DoP方式は再生できないDACがあります。
こういった機器ではマーカーレス技術により大きなデータも再生可能になる場合があります。
■両方式のサポートについて
- どちらでも「結果」は同じですので、通常、こういった「転送方式」を利用時に意識していただく必要はございません。Ver.3.21/3.22Bでは手動で切り替えるようになっておりますが、将来的には自動的に適切な方式を選択する形とする予定です。