S1の発表を受け「ルーターは作らないの?」「中継機は作らないの?」というご質問をよくいただくようになりました。
ここでは、組みあわせによってS1をルーター、中継機として使う例をご紹介します。
そもそもルーター、中継機、スイッチって何が違うの?
ルーターは上流と下流でネットワークを分割し、下流側ネットワークを定義します。このため上流(現状一般的にはWANポートと表記される)と下流のポートが明示的に区切られています。一般的には、DHCPサービスを実行し、下流の機器に自動的にIPアドレスを振る機能も実行します。下流のポート部分はスイッチングハブの機能を持っています。
ルーターの下流として無線LANが使えるものを無線ルーターと呼びます。
無線中継機は無線LANを上流として同じネットワークを無線LAN/有線LANとして拡張するもので、レンジエクステンダーとも呼ばれます。上流は無線LAN一択ですので、ポートの区切りはなくすべて下流扱いです。有線LANポート部分はスイッチングハブの機能を持っています。DHCPサービスは実行せず、IPアドレスの割り振りは上流のルーターが行います。ただし、オーディオルームで活用するような場合においては、無線中継自体の必要性はあまりなく、複数の有線機器をまとめて無線接続するような場合に活用されます。
スイッチ(スイッチングハブ)は有線LANを拡張するもので、一般には無線機能はありません。ポートの区切りはなくすべて下流扱いですが、一般にはどれかを1ポートを上流につないで使用します。DHCPサービスは実行せず、IPアドレスの割り振りは上流のルーターが行います。
つまりは、いずれもスイッチの機能は持った上で、スイッチにネットワーク分割とIPアドレスの割り振り、無線LANの機能がついたものが無線ルーター、スイッチに親回線と無線接続する機能がついたものが無線中継器という見方ができます。
※無線中継器には前述の通り実際には自らで無線通信を受けてそのまま無線で親回線に流す無線中継の機能もついています。
逆に言えば、スイッチに、「無線ルーター部分」や「親回線と無線接続する子機部分」を接続すると、無線ルーター、無線中継器のようになるということになります。
Wi-Fi ルーター
シンプルで低出力・省電力なミニマムな機能を持ちつつ、電源をUSB 5Vとすることで、ACアダプタを使わず、DELA 製品のクリーンな電源で動作するシンプルルーターとして製品化されたのが、当社メルコシンクレッツ扱いの「WMR-RM433W/A」です。
当初は DELA N1Z や初代オーディオ向けスイッチ「BSL-WS-G2108M/A」のUSB端子を使用することを想定していました。
こちらを使うことで、DELA S1 が10ポート使える Wi-Fi ルーターになります。

DELA S1の背面USB端子にWMR-RM433W/Aを接続し、付属の DELA LANケーブル で WMR と S1 を接続します。
WMR-RM433W/A は自動的に起動し、Wi-Fi 親機として SSID を発信し、DHCP機能によってIPアドレスを配布します。
結果として、S1に接続された全機器に IP アドレスが割り振られ、Wi-Fi 機器と通信できるようになります。
iPadやスマートフォンからこのSSIDに接続することで、S1に接続されたネットワークプレーヤーやミュージックライブラリを操作できるようになります。

写真では WMR 付属の電源ケーブルの代わりに変換コネクターで接続しています。当然 L字コネクターはかならずしも要りませんが、この方向で設置するとLANケーブルが下に、LEDやモードスイッチが上に来ます。向きは様々な変換コネクタで自由に設定でき、上の写真では3つのコネクタを使ってロゴが見える位置にしていて若干やりすぎですが、右の写真の「タイプAオス ⇔ microB オスの L 字変換コネクタを一つだけ使う」のが最もシンプルになります。
WMR-RM433W/A の出荷時設定ではローカルモードとなり上位回線は無しで動作します。つまり、インターネット接続はしませんが、iPad 等と無線通信し、命令を流すことはできますので、 NAS からのファイル再生等は問題なくできます。
インターネット接続する場合には、Wi-Fi を使用した「ワイヤレスWANモード」に設定変更する必要があります。ワイヤレスWAN接続することで、既設のWi-Fi SSIDや、スマートフォンのテザリングSSIDなどにWMR-RM433W/Aを接続し、インターネットへの経路を作ることができます。ただし前述のように低出力であったり、無線LANの仕様も 11n
まで、暗号化の仕様にも制限があります。
※この製品にはアクセスポイントモードもありますので、他にルーターがあれば、WMR を使って無線アクセス機能だけを追加することもできます。
中継機
USB 電源で駆動でき、有線・無線の変換をするイーサネットコンバーターという製品があります。こちらについては当社扱いの製品はありませんが、バッファロー社製「WI-UG-AC866」という製品を例にご紹介します。製品の想定としては有線LANのみで無線LAN機能のない機材を無線LANに接続するということで、TVのレコーダーなどが例示されています。
こちらを使うことで、DELA S1 が10ポート使える無線子機・無線中継器になります。

DELA S1の背面USB端子に WI-UG-AC166を接続し、付属の LANケーブル で AC166 と S1 を接続します。
WI-UG-AC166 は自動的に起動しますが、初期状態では接続先がありません。
そこで接続先のWi-FiルーターのWPSまたはAOSSボタンを押して、WPSでの接続を開始し、そのあとで、AC866 の WPS ランプが点滅するまで赤い WPS ボタンを長押し(約2秒間)します。これによりペアリングが行われ上位無線LAN回線との無線通信を開始します。
以降は、S1につながれたすべての機材も無線LANを介して上位ルーターに接続できるようになります。
AC866 の USB コネクタはスイングするようになっていますので、先ほどの WMR のようにL字コネクタを用意する必要はありません。
SFP を使って光で上流との接続を回避する方法もありますが、こちらを使う場合は上流との接続が無線になりますので、こちらでも電気的なノイズの到来は回避することができます。WMR と違って強力で高速な最新型の Wi-Fi ルーターと組み合わせることもできるのがこちらの使い方です。
ただし、WPS が使えない場合は、親回線とのペアリング作業は大変難しくなってしまいますので、ホテル内や公衆無線LANなどの環境には向きません(一般の方はあまりこのような場面はないと思われます)。この点については、前述の WMR の場合は親回線なしでも動作しますし、Web 画面を使って SSID を選択して親回線と接続できますので、比較的こちらの用途でも使えます。
メリット
WMR の場合は、最新の超高速処理を行う無線 LAN 親機に比べると、能力は低いため、結果として選曲時のブラウジング(大量のアルバムカタログをスクロールしていく)の快適性は劣る場合もあります。
一方で、WMR や AC866 の無線機能は、USB給電によって、S1 のトランス電源で駆動され、USB での引き回し距離もほぼありません。システム全体に与える負荷的な影響は一般の 12V 駆動のルーターに比べれば軽微です。
快適性より音質を重視した環境を比較的手軽に実現できるのがこういったオプションを使うメリットです。
S1 以外では?
USB端子で電源供給する機種であれば S1 以外でも同様のことは可能です。
N1や N5、N10 などではトランス電源の恩恵を受けることができますし、N50 などの機種でも一般的なルーターのACアダプタより良い電源を活用できます。
一台に電源ケーブル、LANケーブル両方を接続するのではなく、「電源は N5から取って LAN ケーブルは S100 につないで使う」といった応用も考えられます。
なお、TAIKO 社のルーターが同じく WMR を使った無線機能付加を推奨している模様です。